週末実家に行くと、取っているアサヒ新聞に、チラシがたくさんはさまっている。中には、求人専門のチラシも入っている。
この不況かつネット時代であっても、紙、特にチラシの媒体の求人ってまだあるのだな、と思った。
しかし、見ると、
「横浜市民病院のベッドメイクなど 時給800円」
「清掃 時給900円 休日できる方歓迎」
「事務員募集 Word Excel 英語のできる方 時給900円」
などなどとある。
Word Excelと英語のできる人を時給900円で、というあつかましさにもあきれたが、それより何より、
「これじゃ、暮らせない」
とすぐに思った。
前、私の勤務先に来ていた派遣社員が、
「時給1300円では正直生活が苦しいです」
と言っていた。彼女は姉と同居していたので住居費等の負担は単身の人よりも少なかったはずなのに、それでも、である。
そもそも、こういうチラシ媒体の求人は、家計の足しかヒマつぶしくらいの感覚で来てくれる人を募集しているのかもしれないが、世の中には、失業、転職の失敗、配偶者の死や離婚などに遭遇し、技術も経験もない人らが、とりあえずカネが必要で応募する場合だってかなりあるだろう。しかし、時給800円では、仮に1か月160時間働いたって、12万8000円である。交通費も出ないし、これでも最低賃金法に抵触しないのだから、恐れ入る。
ご存知の方も多いと思うが、この6月から、改正貸金業法が施行された。ヤミ金融の撲滅を目的の一つとして、年収の3分の1を超えて借り入れができなくなったり、上限金利を20%に引き下げたり、ヤミ金融に対する罰則を強化するなどの措置がとられている。
幸い、私はこれまで借金と言うものをしたことがない。人間、自分の収入の範囲内で生活すべきだし、不意の出費にも困らないよう、貯金もしてきた。しかし、世の中には、自分の範囲を超えた生活をしたり、貯金もない人も多い。実際、バブリーな1990年くらいまでは、多重債務の理由は「遊興費、飲食費、交際費、ぜいたく品の購入」などであったが、最近では「生活費、収入の減少」というのがダントツの理由となっている。なんという「悪しき変化」であろう。
貧困で貯金できない人もいるだろうが、現在、年収の3分の1を超えて借り入れている人たちは、そのほとんどが「返済のための借金をしている」のだそうだ。であれば、よほど副収入でもあって、どーんと元本を返すことでもなければ、死ぬまで金利を払い続けていかなければならない。
事実、この6月から、
「これまで借りられていたのに、急に借りられなくなった。生活できない、どうしてくれるんだ」
という苦情がサラ金会社に殺到したそうである。それほどまでに「3分の1超さん」が多いということだ。
また、専業主婦(夫)が、夫(妻)の年収証明書と同意書なしには借り入れができなくなったのも大きな変化である。
そこまでして専業主婦相手に融資をする煩雑さを嫌い、今、大多数の貸し金業者は「専業主婦お断り」になってしまったそうだ。収入の無い専業主婦にカネを貸すということ自体私には信じられないことではあるのだが、それら主婦の中には、夫に内密で借りているものが4割ほどいるという。
いつかテレビでたまたま見たのだが、夫と2人の子供を持つある専業主婦は、夫の収入(年収500万円)ではどうしても足りないので、これまで給料日前に借り、給料日後に返す、を、延々繰り返してきたが、6月以降借りられなくなるのでどうしよう、と悩んでいた。彼女の弁によれば、夫の年収では、家族4人の生活と住宅ローンをまかなうには絶対に不足であるが、夫のメンツを考えると、足りないなどとは到底言えないから、という。
だからこれまで、内緒でこっそりとサラ金を借りてしのいできたのだ、という。
そんなふうに、夫に遠慮のある夫婦もいるのだ。実は、この気持ち、私はわからんでもない。
結婚し、夫が仕事を得た京都に引っ越してかなりの間、私にはまともな仕事が無かった。しかし、夫は専業主婦と言うものを認めないから、食費を出して欲しい、と夫に言うのが死ぬほど大変だった。大変な思いをするくらいなら、と、自分の貯金を取り崩してかなり払った。もう自分の収入の無い身になるのは真っ平だ、と悟った。
そんな「3分の1超さん」たちや「夫に内緒でサラ金を借りていた妻たち」さんがヤミ金融に走り、ヤミ金融の撲滅を目的に改正された法律が、かえってヤミ金融を栄えさせる事態にならなければよいのだが。