柴犬のリキちゃん
うちの近所に、小柄のオスの柴犬を飼っているお宅がある。
私は大の柴犬好きで、昔、その家のおばあさんが散歩に連れていたのころ、あまり他人に話しかけないタチの私が思い切って話しかけ、犬の名前を聞いてみたら「リキです」とのこと。本当に小柄なので、豆柴かと尋ねたら、そうではない、とのことだった。見た目も非常に可愛らしく、ぱっと見ではメスに見えるほどだ。その後、おばあさんとすれ違うと、にっこり目礼を交わすようになった。が、リキちゃん本人(本犬?)は、他人に触られるのが苦手だとのことで、遠くから眺めるにとどめた。
さて、時は流れ、そのおばあさんも亡くなり、今は初老の息子夫婦が1日何度か散歩をしている。その光景を見ると、私は占い代わりに「今日はリキちゃんを見た。ラッキーデー」と思うようにしている。しかし、リキちゃんもすっかり年老いて、体の線ががたがた、体毛もぼさぼさになった。が、顔立ちの可愛らしさが全く変わらないのは見事だ。
ある日のこと、信号待ちをしていたら、むこうからリキちゃんを連れた女性、つまり、亡くなったおばあさんのお嫁さんが来て、偶然にも隣に立った。私はリキちゃんの年齢はだいたい知っているのだが、思い切って「ワンちゃん、おいくつですか?」と尋ねてみた。そうしたら「14歳です」とのこと。え~、そんなトシには見えませんよ、とびっくりしてみせたが、「最近では、おしっこをするにも片足をあげられなくなって」と話してくれた。実際、別のときに、彼女のだんなさんがリキちゃんを散歩しているときに出くわしたが、確かにリキちゃん、4つ足で立ったまま、じょぼじょぼと排尿していた。メス犬だって排尿のときはかがむのに、オスが立ちつくしたまま「じゃー」では、いかにもさまにならない。
誰だって年を取るけど、犬は人間の7倍の速さで老いる。リキちゃんに残された年月も、もうあとわずかだ。自分の飼い犬でもないのに、陰ながらリキちゃんのことを案ずる私である。


