派遣の話 つづき
人材派遣は、もともと、特定の26業務に限って認められたものであった。どのような業務かは、ネットで「派遣 26」と検索すれば出てくるので、あえて転記しないけれど、派遣法成立時には、
「労働者は常に正社員になりたがっているものだ。ただ、一定のスキルがある者であれば仕事に困らないであろうから、この26種に限っては、あえて正社員でないことを専門とすることも認める」
という立法趣旨であったと解している。
あまり知られていないが、「特定派遣」という制度もある。ほとんどの派遣は「登録型派遣」で、これは、ご存知のとおり、仕事のあったときだけ就労する形態で、常に仕事があるとは限らない。これに対し、「特定派遣」というのは、仕事の有無にかかわらず、毎月派遣会社からお給料を払われている派遣社員を派遣先に就労させる、という制度である。私も、これについては、以前ちょっと働いていた人材派遣会社に入るまでその存在を知らなかった。この制度は、ほぼ、エンジニアなどの技術者に限られていたが、それほどスキルがあるなら、わざわざ派遣という形態で働かなくともよいのに、と思っていたし、派遣会社の方でも「特定は全然もうからない」とこぼしていたので、この制度が拡大するとは思えない。派遣切りが問題になり始めたころに、「登録型派遣を廃止せよ」という極論を耳にしたが、それはまず無理だ。第一、派遣会社は絶対やっていけなくなる。
この26業務に限定されていた派遣制度が、1999年に原則自由化され、さらには、最後のタブーとされていた製造業への派遣が経済界の強い後押しの結果2004年に解禁されてから、それまでほとんど女性が占めていた派遣労働者の男女比が、簡単に半々くらいになった。解禁後は、様子見で、1年間に限り、そして、2007年3月からは、最長3年間までは製造業でも派遣社員を雇用することが可能となった。3年を超えて、同一ポジションに派遣労働者を使用することはできず、継続して使用する場合は直接雇用をしなければならない、とされている。ただし、常に正社員でなくとも、契約社員、バイト等、直接雇用であればその形態は問わないのであるが、立法者側の、「労働者は常に正社員になりたがっている」という根本理念は、法改正時にも変えられなかったわけだ。が、人の直接雇用を嫌う企業にとっては、雇い止めをする時期が、1年後から3年に延びただけだ。その、2007年3月以降に派遣された労働者の3年の期限を迎える2009年を前にして、金融不安により、かかる派遣の大量解雇が生じてしまったわけだが、3年の期限を迎え、果たしてどれほどの企業が直接雇用に切り替えるものか、あるいは、経済界が立法府に再度働きかけて、5年とか、果ては無期限に派遣期間を延長させるかひそかに注目していたのだが、こういった経済事情により、大量の派遣契約終了という事態に成り代わってしまい、結論を見ることはかなわなくなった。
雇う側も、「派遣は景気の調整弁。いずれ切るのだから」という気持ちなので、高いスキルに到達できる仕事に就かせないから、派遣労働者の側も、いつまでたっても専門的な技術を身に付けることができない。スキルのない状況から脱出できないでいる彼らにも責任がないとは言えないが、30過ぎても40過ぎても月並みな職務経験しかない者、特に男性が、これほど世にあふれた時代はかつて無かったはずだ。
やはり、派遣は、旧26業務のみに戻すか、あるいは、せめて製造業の派遣は全面禁止、ないし、定年以降の人材に限定してはどうかと思う。2007年3月の3年契約可に合わせるように、製造業に従事する派遣労働者による犯罪行為が増加してきたのも偶然ではなかろう。
ところで、彼らには身寄りのない人が多いようで驚く。住処を失って、背に腹は変えられないというのに、帰る実家も、身を寄せる兄弟姉妹親戚宅もないのだろうか。住処を失った派遣労働者に、空いている公営住宅を提供する自治体も現れ始めたが、これほどまでに頼れる親族も友人もない、あるいは何らかの理由で付き合いを断っている状態の者が多いのもいぶかしい。よほどひどい家族であればまだしも、あえてそういう状態の生活を送っている人がいるとしたら、これを機に即、改めるべきだろう。人間、一人では生きていけない。
最近、炊き出しをすると、あっという間になくなるという。スーパーやコンビニ、飲食店では、まだ十分食べられる弁当や食料品を日々大量に廃棄しているが、期間と場所を限定して、それらの食べ物を彼らに拠出するわけにはいかないのだろうか。コンビニ側だって、強盗の被害に遭うよりは良いだろう。








